無気力さんと同居するらしい


「はぁぁ…」

時間を置いてから生徒玄関に向かう

ドアの外は案の定水浸し

え、なんでみんな傘持ってんの?

1人くらいいないの?ニュース見てなかった人


…もぉお

走って帰るの嫌だぁぁぁ

コンビニで傘を買うなんて無駄遣いはしたくないしなぁ

やっぱり強行突破しかないのか


何度目かの盛大なため息を漏らす

……悩んでいても仕方ない

時間との戦いじゃ

行くか

屋根の外、雨が叩きつけるように降るエリアへ足を出そうとした


その時

「…傘は?」



聞き覚えのある声に足が止まる

バランスを崩しかけて後ろの足をダンッと前についた

そのまま声のする方へ向き直る



「お、織原真琴くん」

そこには学校では話しかけるなと言っていた同居人がいた

学校ではきらりんちょスマイルの織原真琴が家同様やる気のない目で私を見据える


「え、お前俺のことフルネームで呼んでんの」

へ?

「…なんでもない。傘ないの?」

傘…う

「はい」

ふーんと興味なさそうな音で返ってくる返事

え、待って、あなた持ってんの?

織原真琴の右手に握られた黒い傘

え、昨日からテレビなんか一回もついてないのに

そんな誰もが知ってる情報を知らなかった私って…

はぁ

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