誘拐屋の寵愛
オリビアが空を見上げると、美しい星がいくつも煌めいている。空を見ている時だけは自由になれた気がして、オリビアは空にそっと手を伸ばした。

「自由になりたいなぁ……」

ポツリとオリビアは呟く。その刹那、昼間は我慢していた涙があふれ出し、オリビアはその場で泣き出してしまった。一度泣き出すと涙はなかなか止まらない。

温かいご飯が食べたい、綺麗な洋服が着たい、話を聞いてもらいたい、体をゆっくり休めたい、自分を必要とされたい、愛してもらいたい、心の奥底にある願いが胸に広がり、涙をまた止まらなくしていく。

その時、「大丈夫ですか?」と声をかけられた。オリビアが振り向くと、オリビアよりも二十センチほど背が高く、青い目をした顔立ちの華やかな男性が心配げな目をしていた。その男性は持っていたハンカチでそっとオリビアの頬を拭う。

「あ、すみません……」

オリビアが謝ると、男性はニコリと笑った。

「泣いている人を放ってはおけません。俺は医者ですし、話を聞かせてくれませんか?」
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