誘拐屋の寵愛

話を聞く、そう言われたことなどない。オリビアの胸が温かくなり、コクリと頷いてしまう。男性は「では、こちらで話をしましょう」と人気のない公園のベンチにオリビアを座らせた。

「私、誰からも必要とされていないんです……」

そう言い、オリビアは家族のことや職場のことを話す。話しているとまた涙が止まらなくなり、胸が苦しくなっていった。

「それはとても辛いですね……」

男性はそう言い、オリビアの肩に優しく触れる。そして、「こちらを飲んでください」とペットボトルをかばんから出した。

「これは？」

「オレンジピールティーです。抗うつ作用、鎮静作用、不安や緊張・ストレスの緩和などに効果があると言われています。まあ、飲めば落ち着くということです」

男性にオレンジピールティーを渡され、オリビアは一口飲んでみる。おいしいハーブティーを飲むのも久しぶりで、オリビアの瞳から涙がまたあふれた。

「おいしい、です……」