誘拐屋の寵愛
一口、また一口とオリビアはオレンジピールティーを飲んでいく。すると、男性の言った通り心が落ち着き始めた。それと同時に眠気が襲ってくる。

「大丈夫ですよ。安心して眠ってください」

男性に頭を優しく撫でられ、オリビアは久しぶりにホッとしながら眠りについた。



オリビアが目を覚ますと、体を柔らかく温かいものが包んでいた。柔らかいベッドの上に寝かされているようだ。家では硬い床の上にボロ布を敷いて寝る日々だったため、オリビアは飛び起きる。

「ここは……?」

オリビアがいるのは、全く知らない部屋だった。グレーのふわふわしたカーペットが敷かれた部屋には、柔らかそうなソファや白いテーブルやドレッサーなどが置かれている。

混乱しているオリビアが自分の体を見ると、自分の手足には重い枷がつけられていた。

「誘拐?」

自分が何故誘拐されなければならないのか、オリビアには理解できなかった。オリビアの家は確かに裕福な方だ。しかし、オリビアを誘拐して身代金を要求したところで、妹しか愛していない両親はオリビアを見捨てるに決まっている。
< 7 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop