溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 マンションの近くのカフェで食事を済ませたわたしたちは、ショッピングモールまで車を走らせた。

 休日なので多くの人で賑わっていたけれど、タイミングよく車を停めることができた。中も混雑していたけれど、雑貨屋さんに向かうわたしの足取りは軽かった。

 やっぱり和也くんとお揃いがいいなぁ。お茶碗とかマグカップとか、スリッパもいいかも。

 妄想を膨らませながら歩いていると、セレクトショップに飾られていたルームウェアに目がとまる。パイル地で淡いラベンダー色のワンピースタイプ。

 そういえば、かわいいルームウェア持ってないなぁ。

 一緒に暮らすのだから、常にかわいいと思ってもらいたい。同棲が急に決まったから仕方ないけれど、もっと準備する時間があればよかったのにと今更思う。

「瑠璃、向こうじゃないのか?」

 和也くんに声をかけられて、慌てて歩き出す。

 まあ、また今度見に来ればいいや。

 すぐに雑貨屋さんに到着して、かわいいディスプレイに目を奪われる。あれこれほしくなってしまうけれど、どうしてもほしいものだけに絞って買い物をする。

 お目当ては念願のお揃いのマグカップ。これで毎日一緒にコーヒーを飲むのを想像して思わずにやけてしまう。

「ねえ、コレどう思う? お揃い!」

「あ? 趣味じゃない」

 やっぱりというか、予想通りの言葉が返ってきた。そもそも和也くんはお揃いとかあまり乗り気じゃないだろう。仕方ない。

「それより、こっちのほうがいい。これと、これは?」

 和也くんが見せてきたのは、モノトーンのシックなペアのマグカップだ。カッコよくてわたしは一目で気に入った。

「いいね! それ」

 まさか和也くんからお揃いの提案があるとは思っていなくて、一瞬驚いた。けれどそれがうれしくてわたしたちはふたつのマグカップをレジに持っていった。
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