溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 それからあちこち寄り道しながら、必要なものを揃える。和也くんの手は買った荷物で埋まっていた。

「家具見る前に休憩するか?」

「うん。ちょっと疲れたね」

 ちょうどいい具合に、コーヒーショップがある。ちょうど季節限定の商品が発売になったばかりでうれしくなった。

 和也くんはわたしを席に座らせて、注文と会計をしてくれている。

 その背中を見ながらなんてカッコいいんだろうと思う。

それは近くの席に座っている、大学生くらいの女の子たちも同じように思っているみたいだ。彼女たちの会話が聞こえてくる。

「ねえ、今レジの前に立ってる人。かなりいけてない?」

「え~わたしも今見てた! 芸能人かな……どこかで見たことある気がする」

「え? なんの番組? 思い出して」

「いや、なんだったんだろ。でもほんとカッコいいよね。あっ、こっち見た」

 女の子たちが黄色い声をあげる。

 和也くんはできあがったふたり分のドリンクを持って、こちらに向かって歩いて来ている。

 女の子たちの視線が徐々にわたしの座っている席に移る。彼女たちがわたしを見ているのがわかる。

 釣り合い取れてないとか思われちゃうんだろうなぁ。仕方ないけど。

 そんなことを思っていたのに……。

「あ! やっぱり彼女いるんだ。あんなにカッコよくて優しい彼、羨ましいな」

「うん、うん。いいなぁ」

 わたし、ちゃんと和也くんの彼女に見えてる? 妹とかじゃなくて?

 うれしくて思わず彼女たちの方を見る。すると話が聞かれていたのがバレて向こうが気まずそうに目を逸らした。

「どうかしたのか?」

 和也くんがわたしの分のドリンクを渡してくれる。

「ううん。なんでもないよ。ありがとう」

「ならいいけど。俺、ちょっと荷物置いてくるから、先に飲んでて」

「一緒に行かなくていい?」

 かなりの量の荷物だ。飲み終わってから一緒に行ったほうがいいかもしれない。

「いや、俺ひとりで大丈夫。とりあえずお前はここで休憩してろ」

 和也くんはわたしの前髪をくしゃくしゃと混ぜると、椅子に置いてあった荷物を手に取りそのまま駐車場の方へ向かった。

 颯爽と歩いて行く和也くんは、やっぱりカッコよかった。
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