溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 それからいくつか家具を見て、わたしの部屋で使う姿見やローテーブルを買って配達の手配を済ませると、ずいぶん遅い時間になっていた。食事を済ませて帰り、買ったものを片付けるとふたりともさすがにすっかり疲れてしまった。

「あ~うまい」

 先にお風呂を済ませた和也くんが、ソファに座って缶ビールを飲んでいる。洗いざらしの髪を時々思い出したようにタオルで拭いていた。

「瑠璃も風呂入れば? 明日仕事だろ?」

「片付けも終わったし、そうさせてもらうね」

 部屋でお風呂の準備を終えたわたしに、和也くんが大きめの紙袋を差し出した。

「これ、ほしかったんだろ?」

 ショップ名の書かれた紙袋は、今日わたしがルームウェアを眺めてたお店のものだ。まさか……。

 わたしは受け取った紙袋の中身を見て驚いた。

「和也くん、これいつの間に?」

「あ? 車に荷物置きに行く前」

 説明されて納得した。

 紙袋からルームウェアを取り出す。わたしが今日「いいな」と思っていたものだ。

「ありがとう! どうしてコレがほしいってわかったの?」

「そりゃあれだけ、熱心に見てたら気付くだろ」

「うれしい!」

 わたしは自分に合わせてみて、手触りを楽しむ。

「それに、その手触り、俺も気に入った。だから早く風呂入ってこい」

「うん、わかった。和也くん先に寝てていいよ?」

 今日は運転もして、荷物もずっと運んでくれた。きっとわたしよりも疲れているだろう。

「は? 今日は俺、瑠璃を抱き枕にして寝るつもり。そのふかふかの服着てるお前を抱きしめて寝る」

 和也くんはそう言って少し意地悪な笑みを浮かべた。いつもはわたしのほうが押してるせいか、時々急にこういう態度を見せられるとどうしていいのかドギマギしてしまう。

「あ……うん、わかった。急いで入ってくる」

 顔が赤くなったわたしは、彼のいたずらな視線から逃げるように慌ててバスルームに駆け込んだのだった。
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