溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「それに、準備なんかしなくても、今日の瑠璃は俺の想像以上のかわいさだ」

「もう……」

 普段はあまり言ってくれない甘い言葉に、顔が赤くなる。そんなわたしを見て和也くんは声をあげて笑った。

 そんなやり取りをしていると、「失礼します」という控えめな声が外からかかった。

「どうぞ」

 和也くんが返事をすると、ゆっくりとふすまが開いて着物の女性がお料理を運んできてくれた。

「こちらお飲み物と簡単なお食事になります。なにかありましたらお呼びください。ごゆっくり」

「ありがとうございます」

 運ばれてきたのは、ビールと冷酒。大きな平かごに盛り付けられたお料理だった。

 揚げたての天ぷらに、鱧やカンパチ、シマエビなどのお刺身に加えて、冬瓜の煮物や手まり寿司などが、美しく盛り付けられていた。

「さて、食べるか」

「うん……こんなにお料理があるのに、買ってきちゃった」

「気にすることない。食べたかったんだろ。それも一緒に食べたらいい。あんなうまそうな匂いさせた屋台の前通って我慢できるほうがおかしいだろ」

 わたしは全然スマートじゃない自分の行動を反省していたけれど、和也くんはそんなこと気にしなくてもいいと言ってくれた。

 彼は箸を手に取り、出された高級料理より先に焼きそばに手をつける。

「うまい。もう一個買えばよかったな」

 そう言ってわたしに笑顔を向け、もう一口美味しそうにほおばった。

 それから美味しい食事に舌鼓を打った後、すぐに花火がはじまった。

 わたしたちは窓辺に移動してソファを並べて花火を楽しむ。

 目の前で見る大きな花火は手を伸ばせば届きそうだった。菊や牡丹に見立てた花火の連発には思わず声をあげてしまうほど立派だった。

「和也くん、あれ見て。あんなすごいのはじめて見た!」

 あまりにもはしゃぐわたしに、和也くんは苦笑いだ。

「はいはい。わかった。ちょっと落ち着けよ」

 そう言って差し出されたのは、いちごのかき氷だ。ふわふわの氷の上にゴロゴロと果肉の入ったいちごシロップがかかっている。
< 123 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop