溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「お疲れさま。先生を待たずに帰っても大丈夫よ。鍵は今朝もらったわよね?」
一日の診察を終えた中村クリニックには、受付の真鍋さんとわたしだけが残っていた。和也くん……じゃなかった中村先生は川久保さんを連れて川久保さんのご自宅に訪問診療に行っている。
「はい。でもまだ色々とやっておきたいことがあるので」
「そうなの? 初日なんだから、そんなに無理しなくていいんじゃない?」
心配そうな真鍋さんには申し訳なくて、わたしは自分の魂胆を白状する。
「ここにいれば、先生が帰ってきたときに会えるのでっ!」
「あははっ、そうね。ここなら間違いなく会えるわ。いやあ、ほんと今日一日楽しませてもらった」
「お騒がせしてすみませんっ。うれしくてつい」
あまりにもわたしが和也くんにまとわりつく様子がおかしかったらしく、真鍋さんも川久保さんも今日は終始笑っていた。
「全然、気にしないで。それよりも想像以上に仕事ができて驚いた。ごめんね失礼なこと言って」
「全然です! でも中村先生の次に人生をかけてるのが看護師の仕事なので、そう言ってもらえると、とってもうれしいです」
お世辞だということはわかっている。それでも褒められるとやはりうれしいのだ。
「あなたがこのクリニックに来てくれて、本当によかった。明日からもよろしくね。お疲れさまでした」
「真鍋さんっ……お疲れさまでした」
帰っていく真鍋さんに声をかけた後、わたしは診察室にあるカルテ棚に向かう。電子カルテも使われているが、クリニックでは紙のカルテも併用している。明日予約が入っている患者さんの分を用意しておこう。
「え~っと、ふ、ふ……はどこだろ?」
あいうえお順に並んでいるカルテを目で追っていく。〝ふ〟のところでお目当てのカルテを見つけて手を伸ばす。背伸びしてやっと手が届いた。引っ張ってみると、ギュウギュウにつめこまれているせいか他のカルテまで引き抜いてしまいそうだ。
キョロキョロと見回して椅子を発見した。わたしはそれを持ってくると椅子の上に乗って、他のカルテが出てこないようにしてカルテを取り出した。
やった、うまく取れた。今度カルテの整理をさせてもらおう。
お目当てのカルテを手に椅子から降りようとした瞬間――。
「おい、まだ残ってたのか?」
一日の診察を終えた中村クリニックには、受付の真鍋さんとわたしだけが残っていた。和也くん……じゃなかった中村先生は川久保さんを連れて川久保さんのご自宅に訪問診療に行っている。
「はい。でもまだ色々とやっておきたいことがあるので」
「そうなの? 初日なんだから、そんなに無理しなくていいんじゃない?」
心配そうな真鍋さんには申し訳なくて、わたしは自分の魂胆を白状する。
「ここにいれば、先生が帰ってきたときに会えるのでっ!」
「あははっ、そうね。ここなら間違いなく会えるわ。いやあ、ほんと今日一日楽しませてもらった」
「お騒がせしてすみませんっ。うれしくてつい」
あまりにもわたしが和也くんにまとわりつく様子がおかしかったらしく、真鍋さんも川久保さんも今日は終始笑っていた。
「全然、気にしないで。それよりも想像以上に仕事ができて驚いた。ごめんね失礼なこと言って」
「全然です! でも中村先生の次に人生をかけてるのが看護師の仕事なので、そう言ってもらえると、とってもうれしいです」
お世辞だということはわかっている。それでも褒められるとやはりうれしいのだ。
「あなたがこのクリニックに来てくれて、本当によかった。明日からもよろしくね。お疲れさまでした」
「真鍋さんっ……お疲れさまでした」
帰っていく真鍋さんに声をかけた後、わたしは診察室にあるカルテ棚に向かう。電子カルテも使われているが、クリニックでは紙のカルテも併用している。明日予約が入っている患者さんの分を用意しておこう。
「え~っと、ふ、ふ……はどこだろ?」
あいうえお順に並んでいるカルテを目で追っていく。〝ふ〟のところでお目当てのカルテを見つけて手を伸ばす。背伸びしてやっと手が届いた。引っ張ってみると、ギュウギュウにつめこまれているせいか他のカルテまで引き抜いてしまいそうだ。
キョロキョロと見回して椅子を発見した。わたしはそれを持ってくると椅子の上に乗って、他のカルテが出てこないようにしてカルテを取り出した。
やった、うまく取れた。今度カルテの整理をさせてもらおう。
お目当てのカルテを手に椅子から降りようとした瞬間――。
「おい、まだ残ってたのか?」