溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「メシ食って帰るけど、お前はどうする?」

「え? 一緒に行っていいの?」

「嫌なら先に送り届けるけど」

「行きます、行きます! 絶対行く!」

 わたしが前のめりになると、和也くんはクスクス笑った。

「ほら、危ないからちゃんと座れ」

「あの、わたし和也くんと行きたいと思ってた店がたくさんあって……」

「いや、今日の店はもう決めてある」

 もしかして最初からわたしを誘うつもりで?

 そう考えたら顔が思わずにやけてしまった。和也くんに見られないように窓の方を向いてなんとか通常の顔を取り戻す。

 はぁ、まさかこんなに素敵な展開が待っていたなんて。

 やっぱり一緒の職場って最高!

 そんなうきうき気分のわたしだったが、お店に到着してがっくりとうなだれた。

「ラーメン……ですか?」

 看板の下でわたしは思わず肩を落としてしまった。

「なんだ、好きだろ?」

「えっ……まあ、はい」

 そりゃ大好物だけど……でも、ほら、もっとこう……ね。

 自分の思い描いていたお店と違ってがっかりする。

「ほら、行くぞ」

 しかしそんなわたしを置いて、和也くんはスタスタと歩いて行ってしまう。

「待って」

 彼を追いかけて慌てて店の中に入ると、鶏がらスープのいい匂いが漂ってきた。和也くんが座ったテーブルの向かいに座って、壁に書いてあるメニューを見る。するとそれまで残念な気持ちだったのに、どれも美味しそうでがっかり気分はどこかにいってしまった。

「ねぇ、和也くんはどうする?」

「俺はいつも決まってる、チャーシュー麺」

「そうなんだ。美味しそう。あ~でもここはシンプルに醤油にしようかな」

 手元にあるメニューの写真を見てますます悩む。その間も和也くんはなにも言わずにじっと待っていてくれた。

「決まった。わたしは醤油」

「OK。すみませーん」

 すぐに店員さんを呼んで注文してくれた。
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