溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 ラーメンを待っている間は、わたしにとっての一種のお楽しみタイムだ。スマートフォンを手に受信したメッセージに返信をしている和也くんの顔を、じっと眺める。

 真剣な顔してる。なにか面倒なことでもあったのかな? でもそういう顔もすごくカッコいいんだよね。最近またカッコよくなった気がする……。

「おい、いい加減ジロジロ見るのやめてくれない?」

「もう、慣れてるかと思った」

 にこにこと反省しないわたしに、和也くんははぁと呆れたため息をついた。

「なに言っても無駄だってこと、忘れてた」

 そう言ってもう一度大きなため息をつく。

 こんな態度の和也くんだけど、本当に嫌いならきっととっくにわたしのことを遠ざけているはず。

 なんだかんだといいながら、数カ月に一回は顔を合わせるような関係がもうずっと続いているのだ。

 嫌われてはいないと思うんだけどなぁ。でもなんていうか……妹、ほどじゃないな。親戚……って感じかな。

 そう考えてさみしくなった。出会ってから間もなく十四年。それなのにいまだに親戚の子と同じレベルの扱いだなんて。そう気がついてがっかりした。

「百面相するのもやめろ」

「だって――」

「お待たせしました」

 わたしの反論は、店員さんの声に遮られた。

「わぁ~おいしそう」

 店に到着したときに、がっくりと肩を落としていたにもかかわらず、食欲をそそるラーメンが目の前に出されると、思い切りテンションが上がった。

 透き通るような薄い色のスープに、細めのストレート麺。チャーシュー二枚にネギにメンマ。それになんといっても、煮玉子がいい色をしていてとても美味しそうだ。
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