溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「お姉ちゃん」

 瑠衣がわたしの顔をじっと見る。

「わかった! わたしも協力するから、絶対あの男落とそう!」

「お、落とすの?」

「そう、頑張って振り向かせよう。なんだかわたしやる気が出てきた。こっち来て」

「えっ。わかった」

 瑠衣はわたしをドレッサーの前に座らせると、わたしの前髪をダッカールで留めた。

「いい、これからわたしがするマッサージの仕方を覚えて。最初は見様見真似でもちゃんとやってれば必ず効果が出るから」

 そう言って手入れの施された白い長い指で、わたしの顔を優しくマッサージする。

「こうやってね、手入れをすると肌は応えてくれる。それに好きな人を思ってするなら効果は絶大だからね」

「そうなの?」

 疑ったわたしに、瑠衣は力説する。

「恋愛ホルモンがバンバン出るから、効果あるの! 絶対」

「誰が言ってるの?」

「わたし! 絶対だから」

 根拠のない妹の言葉に笑いながらも、そうであってほしいと願う。

 わたしは今までにないほど熱心に瑠衣のレクチャーを聞いて、今日から努力することを決めた。
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