溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「ほらほら、診察はじめますよ」

「もういいところなのに、後でお話ししましょうね」

 にっこり笑った豊美さんは、それからおとなしく和也くんの診察を受けていた。しかしひとたび、彼が聴診器を耳から外すと、豊美さんからわたしへの怒涛の質問攻めがはじまった。

 ときを見計らっていたのか、家政婦さんがお茶の準備をして持ってきてくれた。それと同時に那夕子さんも部屋に入ってきた。一緒にいるのはもしかして……。

「はじめまして、いつも妻がお世話になっております」

「つ、妻……と、いうことは旦那様っ?」

 あまりのイケメンぶりに驚いてしまう。いや、和也くんには及ばないけれど、それでもその優れた容姿に目をひかれた。瑠衣なんかきっと目をハートにするに違いない。

「はい、川久保(たける)です。君があの有名な中村の――」

「ストーカーだ」

 そこですかさず和也くんが言葉を挟んだ。

「ひ、ひどい」

「そうだよ中村、そんな言いかた――クスクスっ」

「尊さんったら、ダメよ」

 那夕子さんが止めると、川久保さんは「ごめんごめん」と言いつつまだ笑っている。「あら、なに? おもしろそうな話じゃない。こっちに来て話をきかせて」

 やり取りをしているうちに家政婦さんがテーブルセッティングしてくれた。わたしは車椅子を用意している家政婦さんに代わって、豊美さんが車椅子に乗るのを手伝った。

「ありがとう。中村くんのところの看護師さんは歴代いい子ばかりね。本人はあんななのに」

 和也くんは窓辺に移動して、尊さんとなにやら難しい話をしている。

「でも、こいうときの和也くんとってもカッコいいんですよね」

 ぽろりと本音が漏れる。

「和也くん……あら、ストーカーっていうのは本当なの? そこのところしっかり聞かせてほしいわ。那夕子ちゃんも男たちは放っておいて、あちらでお茶にしましょう」

 わたしは誘われるまま、豊美さんと那夕子さんとお茶の用意されているテーブルについた。

「中村くんは、あまりきちんとした食事をしていないようだから、いつもここに来たときは色々持たせてるの。あなたもたくさん食べていってね」

「ありがとうございます」
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