溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「それで、どうなったんですか?」

「それからね――」

「はーい、盛り上がってるところ悪いんですが、時間でーす」

 幹事の男性に会話が遮られた。

 まわりのみんなも帰る支度をはじめた。わたしもテーブルの上を少し片付けて自分の荷物を手に持った。

「楽しかったです。ありがとうございました」

 わたしがお礼を言うと、君島さんは自分のスマートフォンを取り出した。

「楽しかったって言うなら、連絡先交換しない?」

「え、あ……えーっと」

「そんなに身構えなくても、嫌だなって思ったらブロックしてくれていいし」

「いや、嫌っていうわけじゃないんですけど……わたし好きな人がいて」

 自意識過剰だと思う。けれど、もし万が一いや億が一、君島さんがそういう気持ちだったらと思うと、一応伝えておいたほうがいいと思ったのだ。

「それってもしかして、勤務先のドクター?」

「え? どうしてわかったんですか?」

 目を開き驚くわたしを見て、君島さんは声を出して笑った。

「適当に言ったんだけど、当たりだったみたいだね。君すごくわかりやすいね」

「え、そうですか?」

 言い当てられて恥ずかしい。

「別に好きな人がいたって、連絡先の交換くらいいいんじゃない? それに俺なら恋の相談にも乗れるよ?」

「え、いいんですか?」

 普段は瑠衣に色々と聞いてもらっているが、男性の意見も聞ければありがたい。

 それまで乗り気じゃなかったのに、わたしったらゲンキンだ。

「いいよ。なんでも聞いて。だから交換しようか?」

「はい」

 わたしはスマートフォンを取り出して、君島さんと連絡先の交換をした。

「これで、よしっと。じゃあ、また俺からも連絡するし、瑠璃ちゃんからも連絡して」

「はい。わかりました」

「じゃあ、記念に」

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