溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「実は和也くんのこと、色々と相談に乗ってくれるって」

「え? お姉ちゃん和也くんのこと話しちゃったの?」

「え、うん。ダメだった?」

 呆れた顔の瑠衣にダメ出しされる。

「合コン相手に好きな人がいるなんて言っちゃダメでしょ? もしかしたら君島さんとワンチャンあったかもしれないのに?」

「え? まさか、ないない」

 慌てて否定したけれど、瑠衣は納得していなかった。

「いや、あの君島さんが自分から電話番号を交換するなんて! お姉ちゃん絶対に連絡途絶えさせないでね。キープしとかなきゃ」

「いや、ちょっと待って。キープってどういうこと?」

「だから言葉の通りよ。中村さんとうまくいかなかった場合、失恋の痛みを癒やすには極上すぎる相手じゃない」

「え? いやそんなすぐに切り替えられないし。そもそもうまくいかない前提で話をするのやめてくれない?」

 わたしが抗議しても、瑠衣はどこ吹く風だ。

「キープっていうと聞こえが悪いけど、要はリスクヘッジよ。みんなやってることなんだから。もし中村さんとうまくいけば、君島さんはわたしが引き受けるから心配しないで」

 まわりの瑠衣の友達もうんうんとうなずいている。

「あのね、わたしそんなに器用じゃないの知ってるでしょ?」

「うん、それがお姉ちゃんのいいところでしょ。そういう無欲なところが君島さんの琴線に触れたのかも? ね?」

「いや、あの、瑠衣ちゃん?」

 否定しようにも瑠衣はもう友達とあれこれと今日の反省会をはじめてしまった。

 外に出ると先に出た男性たちが、待っていた。そこにはすでに君島さんの姿はなく無事に先に帰れたのだとわかった。

「二次会行く人〜?」

 先に個室を出ていた男性から声がかかる。数人の瑠衣の友達が「はーい」と返事をしていた。
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