溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 それから三日後。わたしに衝撃が走る。

 な、なななななんで、ここにいるの?

 わたしは診察室のドアを十五センチほどあけて、中を覗いた。そこにいる人物を見てオロオロしている。

 いや、人違いかもしれない。

 そう思ってもう一度確認するが、間違いない。

「君島さんだ……」

「あら、瑠璃ちゃん知ってるの?」

「ひぃっ」

 背後から急に声をかけられて、飛び上がるほど驚いた。振り向くと真鍋さんがいてわたしをどかせると、隙間からわたしと同じようにして診察室の中を覗いた。

「今日から新しいドクターが来るって聞いてたけど、結構若そうね」

「え? あの人ここで働くんですか?」

「そうみたいねぇ」

 あまり驚いた様子も見せない真鍋さんは、どうやら先に和也くんに聞いていたみたいだ。

「あの人って……」

「おい、みんなこっち来て」

 診察室から声がかかって、ビクッとなった。どうやら呼ばれているようだが中に入りたくない。どうしたらいいのか迷っていると「ほら行くよ」と真鍋さんに背中を押された。

 慌てて彼女の後ろに隠れながら、診察室に入る。

「今日からここで働いてもらうことになった、君島くんだ。俺の大学時代の後輩」

「はじめまして、よろしくお願いします」

 隠れているので声だけのやりとりが聞こえる。

「それで、こちらが受付と事務をしてくれている真鍋さんと……おい、お前いったいなにやってるんだ。山科っ」

 ひっ……名前呼ばれた!

 これ以上隠れていられないと思い、真鍋さんの後ろからひょっこり顔をみせるとバッチリ君島さんと目が合った。
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