溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「合コン……だと?」

 和也くんは画面をまじまじと確認してから、それを君島さんに返した。

「紹介する手間が省けた。今日からお前は君島のところについて。俺はひとりで大丈夫だから」

「えっ、でも」

「話は終わり。以上」

「ちょっと待ってよ、和也くん」

 止めるわたしを無視して、和也くんは自分の仕事に取りかかってしまった。こうなったらきっと話を聞いてもらうのは無理だ。

 わたしは諦めて、診察室を出た。

 それからは患者さんを迎える準備に忙しく、そのまま診察がはじまる時間になった。急ごしらえで作った第二診察室で君島さん……もとい、君島先生の手伝いをする。

「あのあのあの……!」

 バタンと診察室のドアが閉まると、わたしは慌てて君島先生のもとに駆け寄った。

「はいはい。ちょっと落ち着こうか」

 白衣を羽織りながら、笑っている。

「いえ、あのさっきはなんでみんなに写真見せちゃったんですか?」

「あれ? ダメだった?」

「ダメっていうか……あまり中村先生には知られたくなくて」

 歯切れの悪いわたしに、君島先生は妙に納得したようだ。

「そっか、瑠璃ちゃんの好きな人って、中村先生なの?」

「え! あの、どうしてわかったんですか?」

「合コンのときに言ってたじゃない。それに君のその慌て方を見たら、誰でも気がつくと思うよ。わかりやすすぎ」

 あははと笑いながら、予約の患者さんのカルテを見ている。

「でも黙っていて後でバレると面倒でしょ?」

「たしかにそうですけど……もっとごまかす方法もあったと思うんです」

 まあとっさになにも思いつかなかったんだけど。

「バレてしまったのは仕方ないじゃない。と、いうことでこれからよろしくね」

 彼が微笑んだと同時に、朝の診察が開始された。
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