溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「はぁ……疲れた、さっさと片付けて御飯食べよう」

「はい、わかりましたぁ」

 まったく元気のないわたしを見て、真鍋さんはやれやれといった様子だ。

 それも仕方のないことだ。これまでは診察室で一緒に働けていたのにわたしが君島先生のお手伝いをすることになって、和也くんの顔を見る時間が減ってしまった。

 怒られても冷たい態度を取られても、そばにいたいのに。合コンの話だってきちんとしておきたかったのに。

 今は午後の診察前に、患者さんのところに君島先生と往診に行っている。女ふたりで少しゆっくりしているところだ。

「はぁ、いいな。君島先生は。ずっと和也くんと一緒にいられて」

 これまで一緒に往診に行っていたのはわたしだ。羨ましくて嫉妬してしまいそうだ。

「そう言わないの。空いた時間に勉強もできるじゃない」

「それはそうですけど……」

 和也くんの働いている姿を見られなくなるのはつらい。

「そもそも、なんで急にドクターを増やしたんですか? たしかに忙しいですけど、それなら先に看護師を増やすべきだと思うんですけど」

 わたしの疑問に真鍋さんはなにかを考えているようだった。

「まあ、わたしたちが決めることじゃないしね。ほら手を動かして」

「そうですね。はい」

 真鍋さんに言われたわたしは、仕事を片付けてから休憩に入った。
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