溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
 その日の診療後。わたしは和也くんが車を停めている駐車場で彼を待っていた。どうしても今日のうちにきちんと合コンについて説明しておきたかったのだ。

 でも院内で待つと君島先生や真鍋さんに話を聞かれてしまう。できれはふたりきりで説明したいと思い、わたしはひたすら和也くんが出てくるのを待った。

 すると二十分くらい経ったころ、和也くんが出てくるのが見えた。

 よかったぁ。早く出てきてくれて。まあ何時間でも待つつもりだったけど。

「和也くんっ」

 わたしが駆け寄ると、彼ははぁと大きなため息をついた。

「やっぱり、待ってたのか」

「ごめんね。でもどうしてもわたしからちゃんと説明したくて」

 ここならば裏通りで人気もあまりないし、話をするにはもってこいだと思ったのだ。

「別に説明する必要なんてないだろ。たかが職場の上司に合コンの報告までは必要じゃない」

 いつもとなんにも変わらない態度の和也くんにがっかりする。たしかにただの上司なら、合コンに行ったことを説明する必要ないだろう。だけどわたしは彼が好きだと何度も告白しているのだ。それなのに、一ミリも興味のない態度に今日はなんだかとても胸が痛んだ。

「和也くんは本当にわたしに興味がないんだね。合コン行ってもヤキモチのひとつもやいてくれない」

 そもそも今にはじまったことじゃない。けれど今日はなんだか虚しくなってしまった。

「なんで俺がお前にヤキモチなんかやかないといけないんだよ」

「ちょっとくらい、気にならない? わたしが他の男の人と一緒に飲みに行ったり写真撮ったりとか」

 ムキになって聞いても、和也くんの態度はいつもと変わらない。

「別にどうも思わない。そもそもお前は俺のことしか見てないだろ?」

「え、まあたしかにそうだけど……そうだけど。なにその言い方!」

 自信満々な態度に、さすがのわたしもちょっと悔しい。

「でもそれが事実だろ?」

「事実だからこそ、悔しいんです」
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