溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「ああ、そうだな」

 和也くんは真鍋さんのときとは違い、川久保さんの話をしっかりと聞いている。

「うちのクリニックは小さな子も多いですし、その経験は十分生かされるのではないですか?」

 川久保さんの援護に、わたしはうんうんと激しくうなずいた。そんなわたしに味方するように真鍋さんの援護射撃も加わる。

「先生、子供苦手じゃないですか。那夕子さんいなくなったら、診察どうするおつもりなんですか? わたしは受付から離れられませんからね」

「あ、まあ……そうだな」

 形勢逆転、運命の女神がわたしに微笑んだ気がした。

「たしかに、わたし、不純な動機がないとは言いません!」

「おい、そこ言い切るのかよ」

 和也くんが呆れた様子でわたしを見る。

「あら、潔いじゃないの。わたしは好きだわ」

「ありがとうございます」

 味方をしてくれる真鍋さんに頭を下げる。

「でも、和也くんに恥じないように、仕事はしっかりしてきました。もちろんまだまだ至らない点はたくさんあることもわかっています。でも、それでも和也くんの力になれるなら、馬車馬のように働く覚悟はできてますから」

 わたしは自分の心意気をここぞとばかりに伝えた。それに対して真鍋さんも川久保さんも小さな拍手を送ってくれる。

 そんな女性三人に押し切られた和也くんは、とうとう観念した。

「わかった、お前には負けた」

「ありがとうございます。一生懸命頑張ります」

 気合十分で答えるわたしに、真鍋さんと川久保さんが「よろしくね」と声をかけてくれる。

「暑苦しいな。それと、俺のために頑張らなくていいから、患者さんのためにミスせずに仕事をしてくれればそれでいい」

「もちろんです!」

 やったー! やっと長年の夢が叶って和也くんと一緒に働くことができる。

 わたしは思いが叶った喜びで胸がいっぱいだった。

 これから毎日、和也くんと会えるんだ。

 そう思うだけで、思わず顔がにやけてしまう。

「みなさん、どうかよろしくお願いします」

 丸椅子から立ち上がったわたしは、和也くん、真鍋さん、川久保さんに向けて頭を下げた。

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