溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
「最後……覚悟? どういう意味なんだ」

 今度は俺が瑠衣さんの言葉に引っかかった。

「それは……わたしが勝手に言うことはできないです。姉に直接聞いてください」

 問い詰めると彼女はトーンダウンした。

「瑠衣さんの仰りたいことはわかりました。しかしこれは私と瑠璃さんの問題です。ご心配おかけしたことは申し訳ありません。なにかあればこちらに連絡を」

 俺が名刺を差し出すと、瑠衣さんはそれを受け取った。

「あんな姉ですけど、わたしにとっては大事な姉なんです。だから傷つけないでください」

 最後にそう言い残すと、踵を返し自宅のほうへと駆けていった。

 きっと最後に口にした台詞が、彼女が一番俺に伝えたかったことだろう。

「大事な……姉か……」

 家族の仲の良さを見せつけられた気がした。今日の瑠璃の家族の様子を見て、ああいう家庭で育ったから、あんなふうに天真爛漫な彼女に育ったに違いないと思った。

 自分の育った家庭とはまったく違う。仲が悪いわけではないが、お互い微妙な距離がある。

 そんなことを考えていた矢先、俺の人生がその家族のことで大きく動き出した。

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