溺愛全開、俺様ドクターは手離さない
症例4
症例4

 いつも通りの月曜の朝。

 みんなよりも一足早く出勤した。そして掃除をしながらちらちらと入口を見ては、和也くんの到着を今か今かと待っている。

 ああ、なんて謝ればいいんだろう……。

 日曜日に目覚めたとき、わたしはリビングのソファで寝ていた。体を起こすと毛布がかけられていて、どうしてこんなところで寝ていたのかと記憶をたどり青ざめた。

 慌てて床に置きっぱなしにしていたバッグからスマートフォンを取り出して、和也くんにメッセージを送る。なかなか既読にならずにやきもきしていたが、結局夕方に「大丈夫か?」という短いメッセージだけが返ってきた。

 怒っていなさそうで、少しホッとする。

 張り切って早く出勤してしまったので時間が余った。わたしは受付カウンターで本を開いた。以前和也くんが印をつけてくれたところを中心に読み込んでいく。

 そのとき入口から誰かの気配がした。和也くんかもしれないと思って、顔を上げると君島先生がいた。

「おはようございます!」

「あっ、瑠璃ちゃんおはよう。土曜は大丈夫だった?」

「はい。ご迷惑をおかけしました。それより今日は随分早いですね」

 いつもよりも三〇分近く、早い出勤だ。

「ああ、診察前に色々と準備をしておいたほうがいいと思って」

 いつもならカウンターに寄って、わたしと話をする君島先生はまっすぐに第一診察室に入り椅子に座って、パソコンを立ち上げる。

「君島先生? そこは中村先生の――」

「ああそうだね、でも今日は俺がここを使うことになってる」

「え、どういうことですか?」

 ちょうどそのとき真鍋さんも出勤してきた。

「真鍋さん、荷物を置いたらこっちに来てください」

 君島先生が診察室から声をかけた。呼ばれた真鍋さんはすぐにやってくる。

「あ、真鍋さんおはようございます。お子さんのお熱はよくなりましたか?」

「あ、うん。大丈夫よ。みんな今日は朝早いのね」
< 72 / 156 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop