【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
あぁーやってしまった。
ため息は止まらない。
冷蔵庫の食材を確認する為に中を開くと、そこには昨日花乃さんが買って来たチキンの残りが数本。
そしてキッチンのシンクには、昨日私が作り置きしておいたおかずが入っていたタッパーが洗われていた。
昨日は花乃さんがピザとチキンを買って来てくれたから、誰も食べないと思っていたおかずたち。それが空っぽになっていた。
けれども食器が使われた形跡は無かった。
「ああ…タッパーなら瑠璃さんが洗ってたよ。つーか、昨日は花乃さんが買って来てくれたピザを皆で食べてたんだけど」
「そう、ですか…」
「でも真央くんは一切手をつけてなかったよ。
つーか静綺ちゃんの作った料理を全部食べたの、真央くんだもん。俺達食べる分なくなっちゃったんだ」
ソファー越しから豊さんが柔らかく微笑んでいる。 …真央が?せっかく花乃さんがピザやチキンを買って来てくれたのに?
「真央くん、花乃さんに静綺は俺達の健康を考えた料理をいつも作ってくれてるんだ!って反抗しててさ。
あー面白かった。静綺ちゃんの事になると真央くんはいつも必死なんだもん。
この雑誌に出ている人とは思えないよね?」
そう言って、片手で雑誌を掲げる。その表紙は真央だった。口角を上げて笑う、完璧な俳優姫岡真央。
「発売したんですね。」
「うん。冬のドラマが始まるからね、色々な雑誌で真央くんや昴くんを見るよね。
昨日山之内さんがいっぱい持ってきてたよ」