【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

坂上さんは疲れ切っていて、珍しく’ご飯はいらない’と言ってお風呂にも入らずに自室へと行ってしまう。

そんな中でも真央は夕食は食べると言って、私は用意していた夕ご飯を温め直した。皆はとっくの前に自分の部屋に行っており、真央とふたり食堂に取り残される形になる。


真央はとても大人しかった。無言でチキンステーキを口に運ぶ。この沈黙が気まずい。私はここにいていいのだろうか?何もする事のないキッチンでちらちらと彼を見つめながら、かちゃかちゃと食器を悪戯に弄る。

…何か言わなくっちゃ。まずは昨日の言い訳を。でも何から切り出したら?悶々とそんな事を考えていたら、先に口を開いたのは真央だった。

「今日は疲れた。ドラマが1月から始まるのは分かるんだけど、取材を詰め過ぎだ。どの雑誌社も同じような事ばかり聞きやがって」

くるりと振り返って、不機嫌そうに眉をつり上げてご飯を口に運ぶ真央を見てホッとした。
話をするきっかけを作ってくれたのだ。不器用な彼なりに。

「真央の出ている雑誌見たよ!明日全部買ってくるね!」

その言葉に彼は怪訝そうな表情を浮かべる。

「買わなくったって山之内さんが寮に持ってくるだろう?」

「でも自分の保存用に欲しいんだもん。
あの、これ!テレビビジョンの表紙がすっごくかっこいいと思うッ。」

話してくれたのが嬉しくって、ついついテーブルにある雑誌を手にして真央に見せる。
’かっこいい’と言ったら一瞬頬が緩んだのを見逃さなかった。

「そうかぁ?もっとかっこいい写真があっただろう。だって俺だぞ?!」
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