【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
いつもより早くお風呂を上がった真央は、髪も乾かさないまま部屋にやって来た。
茶色の髪の先から、雫が滴り落ちる。…こんな時に思うのもなんだけど、そんな姿さえセクシーで絵になる男だ。
「真央、髪位乾かしなよ!風邪ひいちゃうよ。あんたただでさえ体が弱いんだから」
「人を軟弱な男のように言うな」
「軟弱じゃん…」
「何か言ったか?」
ぎろりとこちらを睨みつける。こういう態度は慣れたもんで、喧嘩をして気まずくなっているよりずっと良いのだが。
タオルで髪を拭きながら、真央はベッドへ座り込む。無言のまま口をへの字にして、ジーっとこちらへ視線を向ける。
床に座り込んでいた私が首を傾げたら、無言のままベッドを片手で叩いた。隣に来いと言う無言の合図である。 ちょっとだけ離れて真央の隣に腰を下ろす。
「何だその距離」
「べ、別に!」
久しぶりのふたりっきり。そうでなくったって緊張してるのに。かっちこっちに強張った体。その肩に重みを感じて横を向くと、肩に頭を乗せて目を閉じる真央は小さく息を吐く。
「はぁー…疲れた。」
「お疲れ様です」
不意にお風呂上がりのシャンプーの香りが鼻を掠める。肩の重みと温もりがとてつもなく愛しい。今すぐに抱きしめたくなる位。
「こんなに毎日疲れてるって言うのにどっかの誰かさんはマンションに来ねぇし。」
「う……ごめんなさい」
謝ると、肩に頭を置いた真央の瞳がぱちりと開く。そしてまたいつも通り意地悪そうな視線をこちらへ向けるのだ。
「ラインでも言った通りだけど、昨日は酔っぱらって泥酔をしてしまってりっちゃんの家に泊まって」