【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
いや、というかヤケクソだったのだと思う。別に特に楽しかった記憶はないし。
「まぁムカつくが…心配はした…」
そう言うと、真央の腕が私の体を包み込む。ふわりと柔らかい香りがして温かい温もりを感じると、心底安心する。
抱きしめて甘えるように私の体へと顔を埋める真央。思わず背中に手を回してぎゅっと抱きしめ返す。
私の胸に顔を埋めたままぽつりと呟くように言った。
「誕生日プレゼント、ありがとう…」
あの日喧嘩をして投げ捨てるように渡す結果になってしまった誕生日プレゼント。
初めての誕生日だったのに、後悔ばかりだった。彼氏の為に人生で初めて選んだプレゼントだったのに。
「高かっただろう。あんなブランド物の靴。俺の好きな色で嬉しかったが、お前は貧乏学生なんだから何も無理はする必要ない。
俺はお前が側に居てくれる毎日が十分なプレゼントなんだ…」
弱々しい声で、何とも可愛らしい事を言ってくれる。胸の奥がキュンとなるのは恋の魔法か?
色々な表情を持っている人で、様々な言葉や態度で私の心を揺らす存在なのは間違いない。けれど、素直になった時の破壊力は凄まじいものがある。
「いいの!私があげたかったんだもん。真央は何でも自分で買えちゃうし、何でも持ってるからすっごく迷ったんだけどね」
「あの靴は…大切すぎて履けそうもない。外に履いていって犬の糞でも踏んだら大変だ」
「あはは~…せっかく買ったんだから履いてよ。絶対に真央に似合うし!」
「あれは家宝として飾っておくことにする」
「んな大袈裟な。本当にあんたは面白いなー」