【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

ゆっくりと顔を上げた真央は、少しだけ不安そうな瞳をしていた。
そしてゆっくりと体を離したかと思ったら、小さなキスを私の唇へ贈った。
擽ったいキス。思わず目を伏せて笑う。すると再び真央は強く私の体を抱きしめた。

「言い訳かもしれないけれど、今は静綺が思っているような事は花乃さんとはない」

あの日の事を口にした。その瞬間、心臓がばくばくと激しい動機を立てて動いていくのが分かる。

「過去に花乃さんと付き合ってたって訳ではない。
けれど静綺も知っている通り過去に仕事で行き詰っていた時に数回彼女とはそういった関係を持った事がある。
誰かに甘えたくて、でも誰にも甘えれなかった状態の時に1番近くに居てくれた人が花乃さんだった…。」

ショックはショックだ。それが私と出会う前だって事は理解している…。誰にだって過去がある。真央は岬さんとだって付き合っていたし、けれどどうして花乃さんにばかり私は拘っているのだろう。

それはきっとあのパーティーの時に花乃さんへ見せた真央の顔が、いつもと違って安心しきっているように見えたせいかもしれない。

真央が1番辛かった時を支えていた人なんだ。
けれどそんな不安をかき消すように強く強く抱きしめてくれた。

「ただ俺は、お前と出会ってからはお前しか見えないし居ないと思ってる。
芸能界での仕事では関わってないかもしれないけど、俺は…静綺が側に居てくれないと仕事も出来なくなるかもしれない。
ちゃんと分かっている。静綺が俺の体や心の事を考えてご飯を作ってくれたり、俺の世話をしてくれてるのも。
それにお前と居ると俺は元気になれるから、それが仕事の活力にもなってる…。」
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