【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

そしてその休みの前の日曜日に、私は特別に真央たちが撮影しているドラマの現場にお邪魔する事が出来た。

「俺のお陰だからな」
「お前だって俺のかっこいい姿を生で見たいだろう」
「本当にお前は俺と付き合えて幸せ者だな。本来ならば全く持って縁のない場所であると言うのに」

鼻高々声高々に偉そうな態度を取る所は目を瞑ろう。

そこまでミーハーなタイプではない。グリュッグエンターテイメントでアルバイトをするまでは芸能人なんて全く興味は無かった。

付き合う前も一度だけ坂上さんの好意で、グリュッグのアルバイトとして撮影現場に来た事はあった。

あの時もこんなに沢山の人の力でひとつの作品を作り上げている事には感心したものだ。


私は普段の素の真央も好きだったけれど、演技をしている時の真剣な真央は世界で1番好きかもしれない。


口では生意気な事を言いまくっていた車内で、真剣に台本を読んでいる横顔。自分の彼氏ながら惚れ惚れしてしまう。

先日激辛ラーメンをすすって吹き出した男とは同一人物とはとても思えない。

どこで努力をしているのかは知らない。けれどもひとりきりの時にこの男が台本を読み込んで、何度もイメージトレーニングをしている事くらいは想像はつく。

この人は典型的な努力の人である。そしてその努力を見せるのを嫌う。天才と思われたい、努力の人。

大いに結構ではないか。私は陰で努力が出来る真央が大好きであった。
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