【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

「棚橋?」

「ごめん、雄太。私帰っていいかな?」

「ええ?もう?!」

「うん。彼氏が心配してるし…。今日も実は嘘ついてここに来てるんだ。男の人が居るって言うと心配しちゃうからさ。
だから…りっちゃんも楽しそうだし、いいかな?」

さっきまで笑っていた雄太が、少しだけ不機嫌になるのが分かった。

それでも立ち上がり、コートを着だす。りっちゃんは隼人くんと話しながらも目配せをしながら「うん、うん」と理解してくれたらしく

お金を置いて居酒屋を出ようとした時だった。 雄太が帰ろうとする私を追いかけて来て、腕を強く掴んだ。

「ちょっと待ってよ」

「ご、ごめん。雄太」

掴んだ腕の力は弱まる事はなく、その場に立ち尽くして頭を掻く。

「何か、棚橋幸せ?」

「え?」

「この間も言ってたけどさ。有名人と付き合うの大変じゃない?
それにそんな何でもない男と居酒屋に来るのにも嘘をつかなくちゃいけない関係って疲れない?
だって楽しそうだったじゃん。皆で飲んでて、でも今の彼氏と付き合ってたら普通の大学生みたいな事は出来ないだろう?」

「いや…そんな事はないよ」

さっきまで優し気だったのに、やっぱり雄太は少し強引な所がある。掴んだ手は離してくれそうもない。
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