【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

最もな言葉に下を向くばかり。顔を上げるのさえ怖かった。握りしめた両手は小刻みに震えている。

「違うの…。りっちゃんに雄太の友達を紹介するって話で…3人じゃなんだからって私もただついていっただけで…だから真央が思っているような事は何一つないの」

バンッとハンドルを叩く音がシンとした車内に響き渡る。その音に思わず肩が上がる。恐る恐る顔を上げると、真央は鋭い瞳でこちらを睨みつけていた。そんな怖い顔…見た事なかったんだ。

「お前は俺を馬鹿にしてるのか?」

「そんな事ない…!大体私と雄太の間に何かあるって訳じゃないもん!」

運転席から身を乗り出して、私側のガラス窓に強く手のひらを伸ばす。
その瞳の中にはもう、怒りしか滲んでいなかったと思う。

強くガラスが叩きつけられた反動で車が揺れた気がする。ごくりと生唾を飲む音が響く。目の前に居た真央は怒りと悲しみが混ざり合った表情をしていて、悔しそうに唇を噛みしめる。

ダッシュボードを乱暴に開けると、その中から何枚かの写真を取り出して叩きつけるようにばら撒く。

その写真の中には、私と…雄太?!一緒に買い物をしている姿。イルミネーション前でまるで手を繋いでるかのように見える写真。どうしてあの日の写真がここに?

「じゃあこの写真は一体何なんだ?!」

写真の中の私達は、誰がどう見てもカップルにしか見えなくて、何故か仲良さげに見える写真ばかりピックアップされているような気がする。

「こ、これは…!ち、ちが…」

「何が違うってんだ…。俺に黙って何をこの男と楽しそうにデートをしていやがる。
俺を馬鹿にしているようにしか思えねぇんだよ!」
< 175 / 229 >

この作品をシェア

pagetop