【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

「静綺ちゃんってばぁー?!」

「へ?うわ、お鍋吹き出してる!」

心配そうに横に立っていた瑠璃さんがコンロの火を止める。

鍋に入っている肉じゃがからは水が噴き出してしまって、慌てて布巾でそれを拭こうとしたら火傷してしまう始末。

「熱ッ」

「何やってるの?早く冷やして~!」

赤く腫れあがった指先を水で冷やすと、ジンジンと鈍い痛みが指先を走る。
…一体私は何をしているのだろう。

正に自業自得。真央が怒ったのも、寮に帰って来ないのも、私への連絡を無視するのも

不甲斐ない自分を情けなく感じて、手の甲にぽたりぽたりと涙の雫が落ちる。茶色の床に落ちた水玉模様を見て、瑠璃さんは悲しそうに眉毛を下げた。

「う…ひっく…」

「静綺ちゃん…お願いだから泣かないで?
大丈夫だよ。真央ちゃんは静綺ちゃんが大好きなんだから、絶対に絶対に大丈夫なんだからね?」

瑠璃さんの温かい手のひらが、私の手のひらを包む。けれど涙は引っ込む所か、その手のひらを更に濡らしていく。

「私が全部悪いんです…。だからこうなって当然なんです…。実際普通の大学生みたいに遊べるのが楽しいと思ってしまったのは事実で…
真央とは出来ない事を比べたのは確かで…だから真央を傷つけてしまったのは、私なんです…」

「静綺ちゃん~…それはきっと誰だって思う事だよ~…
うちらの仕事はやっぱり特殊だから、瑠璃だって一般人の彼と付き合ってた時は悩ませてたと思うもん~…
それが真央ちゃんみたいな売れっ子芸能人ならなおさらだよ…。だからそう思う事は静綺ちゃんだけが悪いって訳じゃないよ~」
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