【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
瑠璃さんの優しい言葉が更に痛い。指先に走る鈍い痛みよりも、心を突き刺すような棘のような痛みの方がよっぽど。
真央の居なくなった寮内はお通夜のように静まり返っていた。
それでも気丈に振舞ってくれる瑠璃さんや、優しい言葉を投げかけるでもなく心配そうな視線を向ける豊さん。
山之内さんの酷く心配してくれて、坂上さんは撮影現場の真央の事について教えてくれる。撮影に支障はきたしていないけれど、真央くんの元気がないと。
そしてそんな私達を心配してくれるのは、寮内の人達だけではなかった。
ある日の休日、寮内は皆出払っていてぼんやりと食堂の窓から外を見つめていた時だった。颯爽と寮に現れたのは、昴さんと岬さんだった。
「ちょっと静綺、あんた何あたしの連絡無視してんのよ」
「静綺ちゃーん、ケーキ買って来たんだよーん」
何て絵になるふたりだ。て、そんな事を思ってる場合ではなくって、何故昴さんと岬さんが?
確かにふたりからは連絡があった。その返信さえ出来ずにこの1週間ちょっと抜け殻状態になっていた訳である。何をしても落ち着かない。何も手に着かない。考える事と言えば、真央の事だけ。
そうなってしまう程、私の毎日は真央が大半を占めていたのだ。
「どうして…ふたりとも…」
「あんたが連絡のひとつも返さないから心配で来たんでしょうが。
丁度昴も撮影が午後からって事で、あたしも空いてたからね」
「岬ってばこんな事言ってるけど、俺に連絡してきて静綺から連絡がないって心配してたんだぜ~?」
「岬さん…」