【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
「田所くんが居ないなんて珍しいね」と。
ほぼ人の訪ねてこない幽霊寮。その管理と警備をしているのは田所さんというおじさんでその人の名を知っているという事、この寮の関係者?
「たっさんはいつも居るはずなんですけれど…」そう言って警備室を覗いてみるとがらりと静まり返っていた。
いつもならば競馬雑誌を見ているか、テレビを見ているかしている筈だけど。
「あの、誰かに御用でしょうか?私大学生ですが一応ここではアルバイトをしている棚橋と申します」
そう言ったら、彼は眼を丸くしてその後直ぐに顔を皺くちゃにして笑顔になった。
「棚橋さん?大学生の。」
「はい…あの…?」
「どうもこんにちは。僕は長岡と言います。一応グリュッグエンターテイメントでお仕事をしています。
今日は山之内さんに用事があって寮を尋ねました。」
こんな小娘に丁寧な挨拶をしてくれた。キャップを外すと姿勢良くその場でお辞儀をする。そして社員証らしき物を見せた。
グリュッグエンターテイメントでお仕事をしているという事は、社員さんか何かだろう。様々な年齢の社員さんが居るものだ。
「私山之内さんに連絡を取ってみます…!よろしかったら中でお待ちになって下さい」
「いやいやそれは大丈夫。山之内さんとは約束をしておりますから、時期戻るでしょう。
それでは中で待たせてもらいましょうかね」