【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

振り返って真央の顔を見ると、瞳いっぱいに涙が溜まっていた。

男の人の涙は産まれて初めて見たかもしれない。茶色の瞳いっぱいに涙を溜めて、片手で顔を覆う。

美しい人は、泣く時までこんなに美しく泣くのだ。涙さえ絵になってしまう。向き直って、少し背伸びをして真央の涙を指で拭う。

「泣かないで」

「どうしてさようならなんて言うんだ。言いたい事だけ言い逃げして、そんなのありえないだろう」

「だって、私が居たらきっと真央を疲れさせちゃうし辛い想いをさせるだけじゃん」

「俺は――辛い想いをしたって疲れたって、静綺と一緒に居たい!
どんなに喧嘩をしたとしてもお前にムカつく事をされようが、生涯一緒に居たい気持ちは一切変わらない。
俺の中の大切なベクトルはいつも同じ場所にあるんだ。そしてその先にお前は必ずいる。
静綺が居ない未来なんて俺は考えられない」

「私、一緒に居ていいの?」

その言葉に、真央はまた怪訝そうな顔を投げかける。
そして体を引き寄せて、自分の方へ持ち上げた。
大好きな人の温もりと匂い。それは私をずっと包み込んでくれていた物だ。

「何を当たり前の事を言っている。つーか離れるなんて絶対に許さないし、お前が俺から離れていくならずっと追いかけまわしてやる」

「怖……」

「俺の想いを舐めるな。
さっさと謝りにマンションに来ると思ったらずっと来なくて、挙句の果てには連絡さえ寄こさなくなりやがって。
お前少し生意気なんだよ」

「だって…迷惑かなって思って。だってずっと無視するじゃんッ!」
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