【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
「何が勝手だ。さっさと会いに来ない方が悪い。それに俺はもう少しでイタリアに行くんだ。
時間は今しかない」
口を動かしていると言うのに、手も忙しく動かしていて、着ていた洋服はいつの間にか床へと投げ捨てられた。
真央が上半身のシャツを脱ぐと、露わになった胸元とこちらを見つめる妖艶な表情。背中に鳥肌が立つほど、綺麗だと思った。
「あの、」
「何だよ、ごちゃごちゃうるせぇな。まだ訊きたい事があるのかよ」
「実はこの間マンションに会いに来たの…。でも花乃さんが丁度来て真央の家に行くって言ったから」
「花乃さん?
あぁ、坂上さんに持ってきてほしい物を頼んだんだが、何故か花乃さんが来たな。
俺は自分のマンションに他人をいれるのが嫌いだからエントランスまで荷物を取りに行ったが、それがどうかしたか?」
嘘のない人。
どこまでも真っ直ぐな人。
きっとこんな人にはもう出会えないと思う。
馬鹿みたいに自分の感情に真っ直ぐで、だからこそその愛は少し重くて、でも心地が良い。
ねぇどうしてあなたはそんなに素敵な人なのに、こんなに私を愛してくれるの?何も持っていない、どこにでも居る普通の私を――。
その愛はとても重たい。その愛はとても心地よく、私の中にすんなりと入ってくる。
ぎゅっと真央の背中にしがみついて「好き」だと呟くと、彼は妖艶な微笑みを見せながら言った。
「俺の方がずっと好きだがな」と。
良く通る掠れたハスキーボイスの心地の良い声が、耳の中するりと通り過ぎて行った。