【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
卒業式を終えて、謝恩会に出席をして少しほろ酔いで寮へと戻る。
グリュッグエンターテイメントの寮。ここに居れるのも残り僅か。実は寂しい気持ちでいっぱいだった。皆と離れるのは寂しい。けれどここから新しい職場へ通うのはやっぱり距離的に難しくて
大学を卒業と共に、私の人生を変えたこの寮ともお別れ。
暗くなった空をバックにどこか不気味な木々の鬱蒼と茂る寮を見上げる。
ここで色々な事があって、さまざまな人と出会った。人生を変えるような出会いが沢山あったんだ。 1年も経たない出来事だったけれど濃すぎる時間だった。
オレンジ色の明かりの灯る寮に入って行く。 どうやら食堂に皆集まっているようだ。真央とそれに同行するマネージャーの坂上さん以外は全員寮に居ると言った。
卒業祝いをしようと言ったのも、真央の提案だった。当の本人は居ない訳だけど。
「ただいまぁ~…」
ひょこっと食堂に顔を出すとパンッと高く響くクラッカーの音が鳴って、カラフルなテープが飛び出してくる。
驚きで一瞬目を瞑ってしまったけれど、開けた先にはいつもの寮の面々と…クラッカーを手に持つ昴さんと岬さんが居た。
そして食堂は可愛らしく飾られていた。
「静綺ちゃん卒業おめでとう~」
そう言って駆け寄って来た昴さん。
その隣で岬さんが真っ赤な薔薇が大きなハート型になっている花束を差し出した。その大きさは小さな岬さんには少し不釣り合いだった。
「え?!何?何?」
困惑していると、山之内さんと瑠璃さんと豊さんもやってきて「おめでとう」と口々に言いだす。
これはサプライズ?だろう。皆の笑顔を前に嬉しくって泣きそうになる。
岬さんの手から、大きな花束を昴さんが奪い取る、と