【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
信じられない事ばかり起こるけれど、喜びにうつつを抜かしていたらどこかで落とし穴が待っているかもしれないと疑ってばかりいる私だけど。
目に見えない人の気持ちを信じる。信じる事からきっと喜びは産まれる。
カフェから出て一旦大学に戻り卒論の制作に戻る。
あっという間に時間は過ぎて行って夕方になって、りっちゃんと別れて寮に戻るための電車に乗る。
途中でスーパーに寄って食材を一通り買い出ししていたら、いつの間にか携帯にメッセージが届いていた。
『テレビ見た?』
『見た!』
『俺かっこよかっただろう?』
『まあまあ』
『何だそれ!!!
この俺様がわざわざ下らない雑誌社の取材に受けてやったんだぞ?!
仕事も忙しいっつーのに掴まって!
それをお前はいつだってそんな短文のメールで終わらせやがって!
本当に俺を愛しているのか?!』
愛している、だなんてよくも恥ずかしげもなく打てるものだ。けれどそのメッセージを受信して心がポッと明るくなった気がする。
今日は真央の大好物のオムライスにしよう。そんな事を考えながら浮足立って寮に帰った。
しかし寮に帰ると異様な雰囲気に包まれていると一瞬にして分かった。
いつもは入り口にある警備室で、競馬雑誌を読んでテレビを見てだらだらと過ごす筈の警備員の田所さん事たっさんが背筋を伸ばし入り口に立っている。
何やら神妙な顔つきをして。
「たっさん…何してんの…?」
私に気づいたたっさんは大慌てでこちらへ駆け寄って来た。
たっさんのこんな慌てふためく姿も珍しい物だ。
「し、静綺…大変なんだよ…」