【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

仕方がなくソファーに腰をおろす。目の前にはにこにこと笑っているが決して目は笑っていない、何を考えているか分からないような謎の男。

シンとした沈黙が一瞬流れて、視線を下に落とすと足がぶるぶると震えているのが分かった。

「そうご緊張なさらずに。
それにしてもいつもお世話になっております。
寮の管理もして下さっているそうで、何でもまだ大学生なのにしっかりした女性だと山之内からも聞いております」

「いえ…そんな私は…」

ごめんなさい。バイトと偽りつつも現在皆との共同生活を楽しんでいる愚かな女です。とは口が裂けても言えまい。

ただでさえきっとこの人は…私を良くは思っていない。

「お話が長くなるのもなんですので単刀直入に言わせて頂きます」

思わず目線を逸らしてしまいたくなるほど、目力のある男だ。人を威圧するというか何というか。

そしてそう言った瞬間彼の表情はぐっと厳しくなるのも感じざる得なかった。

「本日この寮に来訪した理由は棚橋さん、あなたに会う為です」

「はい……」

何となく予感はしていたものの、いざとなるとビビる。ただでさえビビりで小心者な自分だから、高圧的な人間は苦手なのである。

鋭い視線を前に肩がぶるりと震えあがる。足なんてさっきからずっとにガクガクと笑いっぱなしだ。

「真央の事が週刊誌ですっぱ抜かれて、あいつと来たら取材にきたマスコミに堂々と交際宣言までして
こちらとしてはとても困っております。」

「ご、ごめんなさい…」
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