【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

母にどやされながら準備を始めて、白のショートダッフルコートに袖を通した頃には10時を過ぎていた。真央のお母さんがお昼ご飯は用意してくれるそうで、私は近くのお菓子屋さんでクッキーを買って電車に乗った。

電車に揺られながら色々な事を考えていた。ただでさえ派手な顔立ちだからメイクはほんのり薄く。彼氏の両親ウケを狙ってコートの下には清楚系のワンピース。

全部雑誌情報だけど。だって彼氏の両親に挨拶に行くなんて生まれて初めてだし。

バックの中から小さな鏡を取り出し、自分の顔のチェック。うん!今日もあんまり可愛くない!いつも通り!…自分で言っていて悲しくなってしまうけれど。

窓から見える景色を眺めながら、目的地に近くなるたびに心臓が高鳴る。

胸を両手で押さえてフーと深呼吸をひとつ。そんな事を繰り返しているうちにあっという間に目的地へ到着した。


東京寄りの千葉とはいえ小さな駅は古くボロボロだった。近年駅近くの改装が進んでいる途中なのだとか。近くのイベントを行う商業施設は年々盛り上がりを見せている地域のひとつである。

一応駅構内で真央と待ち合わせの予定だったが、真央らしき人影はまだ無い。きょろきょろと見慣れない駅構内に視線を滑らせる。

つか、大丈夫だろうか。都内とは違い余り人の居ない駅。真央のような有名人が歩いていたら嫌でも目立ってしまう。だから初めは迎えは来なくていいと言ったんだが……。

本人は変装しとけば大丈夫だ。と呑気な事を言っていたが。変装したって目立つもんは、目立つ。
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