【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

数分後。
全然派手ではないのに寧ろモノトーンで決めて、キャップを深く被っているのに…私は駅構内に入って来た人を一瞬で真央だと気づいた。

隠し切れないオーラ。そして真央を見つけた途端、自分の顔が歪んでいくのに気が付いた。

「ちょっとぉ~…そんなに速く歩かないでよぉ~ヒールなんだからッ」

「るせ!そんな高いヒール履いてんじゃねぇよ」

「もぉ~…意地悪ぅ!!」

真央の隣。物凄く綺麗な女性が彼の腕を掴んで歩く。

サラサラの栗色の髪に、モデルのような高身長。顔も人間離れしてるほど整っていて、美しく施されたネイルがキラキラと目立つ。その手で真央の腕を掴む。

はぁ?!誰よ!その女!
もしかして地元の昔の女とか?!

え?!何彼女に両親を紹介するこの日に女連れてんのよ?!腕まで組んじゃって。

そして私に気が付いた真央は平然な顔をして「おお!静綺」とこちらへ手を挙げていた。
怒りはもう頂点へ達していた。


何をそんな綺麗な女性を連れて、よくも平然と私の名前を呼べるものだわ。

まるで子犬のように嬉しそうな顔でこちらへ走り寄って来る真央の足首のブーツにキックが力強く入る。

それはどうやら命中したようで、彼は一瞬で顔を歪ませたかと思えばゆっくりとその場で足首を押さえるように蹲る。

ゆっくりと顔を上げた真央は恨めしそうにこちらを見つめる。その目は涙目になっている。思っているより命中してしまったらしい。
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