【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
「だってあんた口を開けば私をブスだとかスタイルが悪いとかしか言わなかったし、殺害予告も何度もされてどれだけ恐怖だった事か…」
今でも思い出すと震えが止まらない。
口をぽかんと開けたまま、間抜け面をしていたかと思えば、次に顔を真っ赤にさせてぷるぷると両手を震わせる。
まさか最初から自分に惚れていると思っていたなんて、やっぱりあなたはド天然ね。
拗ねて背中を向ける姿さえも愛おしい。人を好きになるとこんなにも心が愛しさでいっぱいになるのね。思わずその背中に強く抱き着いた。
あぁ幸せ、このまま眠ってしまいたい。うとうととしたまどろみの中で、ふとカーテン越しに空を見つめたら夕陽が落ちていくのが見えた。
慌ててベッドから起き上がる。
「何だよ……騒々しいな」
「今何時?!」
ベッドサイドにある携帯を手にすると、そこには16時半と時刻が刻まれている。
「やばいー!早くりっちゃんを迎えに行かないとーーー!!!!」
―――――
17時になるギリギリにりっちゃん宅に着いた。
真央にはサプライズバースデーの件は内緒にしていたから、りっちゃんを迎えに行くと言うと不思議な顔をしたけれど、そこは適当に誤魔化した。
助手席から後部座席に移動して、りっちゃんと隣り合って座る。
りっちゃんは迎えに来てくれた真央にお礼を言うと、私のお母さんにしていたように彼は柔らかく笑う。…ほんっと…この人って俳優だと思う。
皆この作られた笑顔に騙されている。