【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

昴さんの言葉に岬さんは顔を真っ赤にして、こちらへ顔を向けたと思うとイーっと口を横に拡げる。

国民的アイドルのセンターを張るほどの人気者の彼女の、意外な位意外な可愛らしい一面。それにはつられて笑ってしまった。

「私は好きですよ。岬さん。初めはムカつくって思ってたけど、こうやって話してみるとこんな面白い人だったなんて」

「面白いって褒め言葉じゃないしッ。私はアイドルなの!可愛いの!」

「面白いのに可愛いって最強じゃないですか。
ほんっとうに羨ましいですよ」

私の言葉に岬さんは耳まで赤くさせて、その場で大きなため息をつく。

「意地悪をする気さえ失せるのよ、あんたには」そう言って。
―――――


それからすぐに岬さんの収録が始まって、テレビ局を後にした。

今日は昴さんと岬さんに会えて良かった。ひとりで居ると考え込んでしまうばかりだったから、息抜きになった。

今まではずっと自分の世界とは違う場所に居ると思っていた人たち。テレビの中の人達。

けれどそんな人達の中にも当たり前だが感情はあって、私達一般人と同じように普通に人を好きになったり、人を羨む感情がある。

そんな事は真央に出会って分かったつもりではいたのに。

局内を出て、大都会の空を見上げていた。
今日は晴天で、酷く空気が澄んでいる。

今頃真央は、どこかのスタジオで雑誌の撮影をしているのだろうか。あの美しい人と共に……。それを考えたら、手のひらに入り込んでくる風の冷たささえ切なく感じる。

でも昴さんと岬さんと話した事でちょっぴり元気が出た!
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