【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜

テーブルの上に袋を置いた花乃さんはキッチンにやってきて、横から私の料理を覗き込む。

「静綺ちゃん、真央はピーマンも人参も椎茸も苦手なのよ?」

私の方が真央をよく知っている。そんな口ぶりで言ってきた。

「彼女ならその位知ってなくっちゃね?」

優しい口調だけど、嫌味ったらしい。でもそれは私の心が汚かったからそう聞こえてしまったのか。

別に意地悪でしてる訳じゃないのに。私だって真央の嫌いな物は知ってるし、それでも栄養のある物だから食べて欲しかっただけなのに

どうして、こんな悔しい気持ちでいっぱいになるの。
乱暴にタッパーに作ったおかずを詰めて、それを冷蔵庫にしまう。

「花乃さん、それは違うって!」

真央は何かを言おうとしたけれど、その言葉さえもう私の耳には届かなかった。

花乃さんと居ると自分が惨めな気持ちでいっぱいになるから。その場から逃げるように部屋に帰った。

何も言わないまま同窓会に行く準備をして、寮を出ていく。

もしかしたら花乃さんと真央がふたりきりになってしまったら、またそういう関係になってしまうかもしれない。それでも仲の良さそうなふたりの姿を見るのが嫌だった。

―――――


同窓会は都内の大きな居酒屋で行われる事になっていた。

真央が行くなと言うのならば行くのを止めようと思っていた土曜日。結局喧嘩をしたままロクに話もせずに、花乃さんが寮にやって来たと言うのもあって浮かない気持ちのまま同窓会にやって来てしまった。

化粧も適当。その辺に落ちてたトレーナーとジーンズにダウンを羽織って、かなりカジュアルな格好で来てしまった訳だが…。
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