【完】スキャンダル・ヒロイン〜sweet〜
「隣、いい?」
「は、はいぃい!どうぞ!」
「何それ、うける」
隣に座って来たのは、全く顔が思い出せない長身の男の子だった。
爽やかな黒髪の短髪で、すっきりとした顔立ちの見るからに好青年。……誰だっけ?名前思い出せない。
えぇっと…あの頃背の大きかった男の子はー…頭の中でうんうん唸りながら考えていると、隣に座った爽やか男子は声を上げて笑った。
「棚橋、俺が誰だか分からないんでしょう?」
「いやー?そんな事はないよぉ!久しぶりだねぇ!」
誰だ?!相当レベルの高い男の子。今どきっぽくはないけれど、誰からも好かれそうで爽やか系な男子。
あはは~と愛想笑いをしてその場をやり過ごそうとしたら、その人はプッと顔をくしゃくしゃにして笑った。お!笑顔いいねぇ。ってそんな事言ってる場合か。
しかしいくら記憶を辿っても思い出のアルバムは一向に開かれそうもない。だって当たり前。ここに居る大半の女子も男子も誰だか名前と顔が一致しない。
隣に座っていたりっちゃんがジョッキを片手に身を乗り出す。そしてその男の子を見て声を上げた。
「雄太じゃん!」
「おう、星月。星月も相変わらずだな」
「ゆ、雄太?!そんなに背ぇ大きかったっけ?!」
小学校の頃から面白くて人気者で、走るのも1番速かった彼は女子からもとても人気があった。…私は正直興味がなかったけれど。
けれど決して身長が大きかった訳ではない。どちらかと言うと小さかったような…。それにこんな男らしい顔をしていただろうか。
とはいっても中学までの雄太しか知らない。あれから何年も時は流れているのだ。