若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
コンプレックスが溶け合う夜
部屋の中で物思いに耽っていた私は、急にかかってきたスマホの着信音に驚き、番号も確かめずについタップしてしまった。



「もしもし…？」


一体誰だろう？…と声を確かめるように聞き入っていると、いきなり「はぁー」…と重苦しい溜息が聞こえ、新手のイタ電か何かだろうか？…と身構えた。


（これ、切った方がいいの！？）


しかし、これまでそういうものは一切かかってきたことがないのだし、誰かが間違ってかけてきた可能性もある。そう思ってスマホを耳に当て直し、相手が何か言ってくるのを待った。


「……悪い。こんな時間に」


溜息を吐く相手はいきなり謝り、その声にハッとした私は、もしかして…と半信半疑で訊き返した。


「…あの、ひょっとして、橘さん！？」


相手の名前はわかっているのだけれど、やはり呼べないというか、躊躇って名字を呼び返す。


「ああ…」


相手はそう言うと黙ってしまい、その重苦しい雰囲気に何かあったのだろうか…と気になった。


「…あの、もしかして、酔ってるの…？」


なんとなく歯切れの悪い感じに聞こえたから、アルコールの所為だろうか…と疑った。


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