若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
ゴクッと唾を飲み込みながら、何故そんなことを言うのだろう…と思っていた。

この間はあんな態度をとったくせに、今こうしてかかってきた電話に、少し浮かれている様な感覚があった。



「いいのか?」

「ええ。何処へ行けばいいか、教えて下さい」


ドクン…と心臓が弾けて動悸が始まる。
自分でも余りに大胆なことを言ってしまった様な気がして、ぎゅっとスマホを握りしめた。


「じゃあ……ホテル・ビレッジへ来て欲しい。俺は君が来るまでに酔いを醒ましておくから、ホテルのロビーに着いたら連絡してくれ」


そう言うと、彼は返事も聞かずにさっさと通話をオフにする。
おかげでこっちは反論もできず、呆然としながら暗くなった液晶を眺めた__。



「……ホテルなんて」


いや、ただ単にホテルまで来て欲しい…と言われただけだし、自分から彼に話があると言った手前、今更伺いません…とも言い難い。


(彼には部屋まで来て欲しい…と言われた訳ではないのだから、そう身構える必要もないよね)


部屋に誘われれば断ったらいいんだ…と決意しつつ支度を始める。

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