若きビル王とのエキサイティング・マリッジ

呆れたような声に驚き、ギクッとしながら振り返ると、視線の先には胸の前で腕組みをする男性が立っていて、じっとこちらを眺めながら顔元には冷やかな笑みを浮かべ、「随分楽しそうだったな」と言ってくる。


「ほら、さっさと出ろよ」


怒りを抑えた様な雰囲気で側へ来ると腕を持ち上げ、さっさと玉砂利の外へ連れ出す。


「全く…勝手に中へ入るな、と何度も声をかけたのに、ずっと無視し続けやがって」

「ええ？」


ハッ！そう言えば、お見合いの最中だった！

しかも、玉砂利の中には綺麗な波線が引かれ、如何にも流れの中に岩があるように設えられていたのに。


やばい…と焦りながら振り返ったが時は既に遅く、波の上には、私の草履の跡と彼の靴跡とがくっきり残っている。


「あ…どうしよう」


それに、この人にも何て弁解をしたらいいの？と相手の顔を見つめ直し、ひくっ…と頬の肉を引き攣らせながら、「本当に申し訳ありません」と平謝りする。

彼はきっと怒っているだろうと思うと、それ以上の言葉は見つからず、顔を上げる訳にもいかなくて、じっとお小言が始まるのを待っていた。