若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
「まさか、こういう展開になるとは思ってもいなかったが………でもまあ、たまにはこういう仕打ちも悪くない」

「はぁ!?」


マゾか!?と思うような言葉を発した彼は、ちらっと袖口を持ち上げて時刻を確認し、「もう時間か」と呟く。


「残念だけど、今日はこれまでだ。次回またゆっくり会って、今度は顔を見て話をしよう」


そう囁くと口元に笑みを浮かべ、さっと踵を返して去って行く。



「えっ…?」


一人庭園に残された私は、相手の背中を呆然と眺めたまま見送る。

頭では、今の一言は絶対に社交辞令よね…と確信し、取り敢えずは激怒しなかった彼の態度に感謝して、もう二度とお見合いはご免だ…と思いながら、歩き去って行く背中に、ピョコンと小さなお辞儀をした。



一時間後、テナントビルの店に戻った私を待ち受けていた祖父は、嬉々としながら迎え入れ、「よくやった!」と褒めてくる。


「はっ…?」


何が…と首を傾げて訊ねようとすると、祖父はポンポンと腕を叩きながら微笑み、「相手から早速電話があった」と言うではないか。

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