若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
「…全部、コンプレックスだったのに……」


泣きだしそうな声を吐き出すと、頭上から彼が笑いかけてくる。
そして、顔を隠していた手を握ると指先にキスをして、「こっちを見ろ」と囁いた。


「香織のコンプレックスなんて、俺の熱で溶かしてやる。だから、安心して縋っていろ」


宣言されながら彼と一つになり、私は背中を抱きしめた。
彼は私に腕を回すと呻くような声を漏らして、「悪い…」と謝り、腰を揺らした。



……彼と結ばれた後、ふと夜中に目を覚まして隣を振り返った。
肩を抱いて眠っている彼は静かな寝息を立て、深い眠りに落ちているようだった。


「…今夜みたいな格好を見せたのも、実は…貴方が初めてよ……」


琉成さんには、あんな服装をしたところを一度も見せたことがない。
何もかも、コンプレックスを曝け出したのは、彼の前でだけ__。


「こんな私を受け止めてくれて、どうもありがとう…」


お礼を囁き、彼の頬にキスをする。
そして、決意を固め、彼が目覚める前に、その部屋を後にした___。



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