若きビル王とのエキサイティング・マリッジ
夢を叶えていく第一歩
三ヶ月後に決まった挙式に向け、私達は大忙しだった。

披露宴会場は、早くから広大な庭園が臨める老舗のホテルと決まっていたのだが、そのホテルのチャペルで挙式したい…と言うと祖父に反対され、「呉服屋の娘がチャペルで挙式なんぞ」とお冠になられた。


「でも私、白無垢の生地を使ったドレスを着てみたいの」


ずっとそれが夢だった…と言うと急に顔を綻ばせ、「そういうことなら任せておきなさい」と反物を差し出してくる。


「これを使いなさい」


そう言って広げられたのは、七宝柄を織り込んだ生地に、羽を広げた二羽の鶴が刺繍されたもの。
他には余計な刺繍はされておらず、「これならドレスにでも何にでも、自分が思うように使えるだろう」…と言って渡された。


祖父に感謝しながらそれを使い、デザインしたのは前身頃がシルクの生地で出来たもの。
胸元にはビーズで刺繍をあしらい、キラキラと光って美しい仕上がりになっている。


でも、本当に見てもらいたいのは後ろ。
背中から足元にかけて使用した白無垢の生地には、クリスタルビーズで刺繍を増やし、裾を引き摺りながら歩く奥方様をイメージした。


< 134 / 137 >

この作品をシェア

pagetop